1冊の統合報告書ができるまで
統合報告書。
それは企業の「過去・現在・未来」を繋ぐ、年に一度の壮大なプロジェクト。
アサヒコミュニケーションズのチームが、お客さまと共に駆け抜けた1年間の記録。
そこにあるのは、スマートな戦略と、人間味あふれる情熱でした。
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テージさん
プロジェクトマネジャー
「定時で最高の結果を出す」がモットー。緻密なパズルを組み立てるような進行管理で、チームの無駄な残業を防ぐ守護神。
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ロジックさん
ディレクター
AIツールとWeb解析を駆使するデジタル派の参謀。クライアントの課題を論理的に分解し、誰も思いつかない「切り口」を提案する。
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タイパさん
デザイナー
複雑なデータを美しいインフォグラフィックに変換する職人。効率的なツール選定で、修正作業の時間を半分に短縮する技術オタクでもある。
01『出会いと戦略』(12~1月)
始まりは、1通のダウンロード通知から。
12月のある火曜日。テージ(PM)のPCにマーケティングツールからの通知がポップアップした。
『K社〇〇様がホワイトペーパー【統合報告書トレンド2025:人的資本の可視化】をダウンロードしました』。
K社は、東証プライム上場の電子部品メーカー。業界大手だが、統合報告書はまだ「お堅い」イメージが強い企業だ。
皆さん、K社が動きました。例のホワイトペーパー経由です。きっと、来期の方針で「人的資本開示」に課題を感じているはずです
なるほど。早速、K社の過去3年分のレポートと採用サイトの乖離をAIで分析します。…(キーボードを叩く音)…出ました。採用サイトには若手の熱気があるのに、報告書には数字しか並んでいない。ここが提案の切り口ですね
テージ(PM)はその日のうちに、定型文ではない、K社の課題に寄り添った御礼メールを送信。その「温度感」が担当者の目に留まり、翌週のオンラインミーティングが決まった。
Zoomの向こうに映るK社サステナビリティ推進室の担当者は、少し困った顔をしていた。
実は、予算が昨年よりシビアなんです。でも、経営層からは『もっと投資家に刺さる内容にしろ』と言われていて...。どうすればいいかわからないんです
02『コンペティション』(2月)
お客さまの“分室”になるという約束。
RFP(提案依頼書)が届く。競合は大手代理店を含む3社。規模と知名度では勝てない。
アサヒコミュニケーションズが勝てるフィールドは「伴走力」と「スマートな制作フロー」だ。
アサヒコミュニケーションズの提案骨子
■AIリサーチによる事前準備
工場見学などの物理的な拘束時間をカットし、その分のコストをデザイン品質に転嫁。Web上の情報をAIで徹底解析し、仮説を持って提案する。
■サステナビリティ推進室の「分室化」
ビジネスチャットツールで常時接続。メールの往復時間を排除し、細かい相談も即レスで対応する体制。
プレゼン当日。テージ(PM)はK社担当者の目を見て言った。
私たちは、御社のチームの一員です。面倒なスケジュール調整も、社内の意見調整も、私たちが引き受けます。皆さんは、本来の業務である『未来の策定』に集中してください
後日、受注の連絡が入った。「あの言葉が、一番の決め手でした」と。
03『企画・デザイン』(3~4月)
ホワイトボードの前で、チームはひとつになる。
キックオフミーティングを経て、制作は順調に進み始めた...はずだった。
フォーマットデザインの決定直前、K社の新任役員から「待った」がかかったのだ。
申し訳ありません...。役員から『綺麗すぎる。もっと泥臭い、現場の熱量を感じるデザインにしてほしい』とオーダーが入ってしまって。来週の役員会までに修正できますか?
通常なら「週末返上」が頭をよぎるシチュエーション。
しかし、テージ(PM)は慌てない。すぐにチームを会議室に招集し、ホワイトボードに向かった。
期限は3日後。でも休日出勤はナシで行きましょう。タイパさん、今のデザインをベースに、色味と写真の扱いだけで印象を『熱く』変える方法はありますか?
あります。今はコーポレートカラーの『青』単色ですが、これを『青から赤へのグラデーション』に変えて、熱の変化を表現しましょう。写真は、あえてノイズを加えたモノクロにして、現場のリアリティを出します。これなら、ゼロから組み直さなくても半日で3パターン作れます
チームの知恵が集まり、効率的な解決策が生まれた。ロジック(Dir.)とタイパ(Des.)は集中して作業に入り、金曜の定時前には見事な修正案が完成。
翌週の役員会。「これだよ、これ!」という役員の承認を得て、プロジェクトは再び加速した。
04『取材・撮影』(5~6月)
シナリオ通りにいかないから、現場は面白い。
初夏の晴れた日。ロジック(Dir.)は自身が作成した完璧な香盤表を手に、カメラマンとともにK社のマザー工場へ向かった。
しかし、到着直後にトラブル発生。
申し訳ありません…。マシンの不具合対応で、インタビュー予定だった工場長が急遽対応できなくなってしまいました。どうしましょう?
ロジック(Dir.)は焦るK社担当者をなだめるように提案した。
…なるほど。工場長は無理ですね。では工場長の代わりに、今そこにいる若手のオペレーター3人を集めてください。テーマを『トップダウンの改革』から『ボトムアップの改善』に変更しましょう
その報せを受けたタイパ(PM)はオフィスから即座に質問案を修正し、取材現場のロジック(Dir.)に送信。
結果、食堂で急遽行われた若手座談会は、予定調和なインタビューよりも遥かに生き生きとした「現場の声」を引き出すことに成功した。
「逆に良かったですね!」K社担当者との間に、戦友のような絆が生まれた瞬間だった。
05『制作・校正』(7~9月)
五月雨の修正依頼を制する、クラウドの力。
真夏。制作のピーク。各部署からの修正依頼が五月雨式に(バラバラのタイミングで)押し寄せる。
かつてなら、修正原稿のバージョン管理で混乱し、残業に明け暮れるフェーズだ。しかし、今の私たちは違う。
【Before】従来の現場
- 「最新の原稿はどれ?」の確認電話
- 手書きの赤字が読み解けない
- 修正漏れによる再校正
- 結果、残業が増える
【After】現在の現場
- オンライン校正で全員が同一画面を見る
- 進捗状況がリアルタイムで可視化
- チャットで疑問点を即解決
- 定時内で効率よく完了
皆さん、システム上でステータスが『確認待ち』になっている修正指示だけ対応お願いします。それ以外は私が整理しています。タイパさんはデザインだけに集中して!
ロジック(Dir.)の交通整理とクラウドシステムの連携により、膨大な修正作業も整然と処理されていく。誰も疲弊することなく、着実に完成へと近づいていった。
06『完成・納品』(10~11月)
世界へ届く、一冊。
秋。日本語版の校了。そして英語版のDTP、AI検索に最適化されたインタラクティブPDFの作成。
最後の1ページまで、タイパ(Des.)は文字詰めの調整(カーニング)にこだわった。
神は細部に宿る。投資家は、この数ミリのズレに企業の『品格』を見るんです
11月末、すべてのデータがK社のWebサイトに公開された。
その夜、K社担当者からチーム全員宛にメールが届いた。
件名:御礼
長い間、本当にありがとうございました。先日の投資家ミーティングで『今年のレポートは非常にわかりやすい、会社の顔が見える』と高い評価をいただきました。
貴社の皆さまは、もはや外部業者ではなく、私たちの『チームメイト』です。来年も同じメンバーでお願いできますと幸いです。
オフィスでメールを読んだ3人は、顔を見合わせて小さくハイタッチをした。
派手な打ち上げはない。でも、この静かな達成感こそが、この仕事の報酬だ。