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印刷用語で「鶴の恩返し」を読んでみた

印刷用語で「鶴の恩返し」を読んでみた

 

昔々、ある飯田橋界隈にフリーデザイナーの老夫婦が住んでいました。

 

グレースケールの雪が降りつもる冬の日、老爺が出力センターへゲラを取りに出かけると、ドブのトラップ処理に苦しんでいる一羽の鶴を見つけました。哀れに思った老爺は、ノセ処理を手伝ってやりました。

 

クライアントからの赤字FAXがしんしんと積もるその夜、見るからにデザイナー風の娘が夫婦の家へやってきました。下版作業で終電を逃したので一晩泊めて欲しいと言う娘を、夫婦は快く家に入れてやりました。その晩は校了間際の赤字FAXがなかなか止まず、デザイナーの老夫婦は完徹覚悟でしたが娘が甲斐甲斐しく手伝いをしたおかげでどうにか校了できたのでした。翌朝、娘が「電車通勤片道一時間半のデザイン事務所で正社員として働くより、いっそあなた方のバイトにして下さい。」と言います。徹夜明けでナチュラルハイな夫婦は喜んで承知しました。

 

そんなある日、娘が「リュウミンを使いたいのでモリサワフォントを買って欲しい。」と頼むので、老爺が送料無料のヨドバシ.comで買うと、娘は「絶対に中を覗かないで下さい」と言い残して電算室にこもり、三日三晩不眠不休でカンプを仕上げました。彼女の組版は大変シズル感にあふれ、たちまち代理店やクライアントの間で評判となり、他のコンペにも声をかけられました。娘はさらに、老爺が購入したPhotoshopで2案目を作り、それはいっそう見事な出来栄えで、老夫婦のバジェットは更に増えました。

 

娘は3案目のラフを作るためにまた電算室にこもりました。初めのうちは辛抱して約束を守っていた夫婦でしたが、娘はどうやってあんな美しいレタッチをするのだろうと、好奇心に勝てず少しだけ観音開きして中をのぞきました。そこには、一羽の鶴が自腹購入したストックフォトを使ってマスク処理をしていました。鶴はやつれ果て、見るも哀れな姿でした。驚いた夫婦の前にリポDを飲み終えた娘が来て、以前助けてもらった鶴だと告白しました。このまま社員となるつもりだったが、正体を見られたので去らねばならないと言います。そして鶴の姿になり、念校データのアウトラインをとって泣き別れを惜しむ老夫婦に見送られ、金赤の朝焼けの中、空へと帰っていきました。

 

元ネタは、広告用語で「鶴の恩返し」を読んでみた

日時:2016年5月9日  カテゴリー:WEBユニット
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