紙がなくなる日

印刷業界を中心として「紙」に関わる多くの人たちは(私たちを含め)、

今まさに大きな危機感を持っています。

 

キンドルやiPadをはじめとする電子ブック、電子ペーパーへの曖昧な危機感が

具体的な危機感へと変った年が、この2010年だと思います。

 

今まで多くの「紙」関係者は、

「紙のライバルは、インターネット」だと思い込んでいるような感じがありました。

そして、ようやくその見方が間違っていたことに気づき始めました。

「紙のライバルはデジタルである」と。

 

そもそもデジタル情報の最大の利点は、

出力デバイスを選ばないことにあると言えます。

(情報の複製に関してはメリット・デメリットあるので割愛します)

 

今まで紙でしか読めなかったものが、

パソコンで読めたり、ケータイで読めたり

キンドルで読めたり、iPadで読めたり。

 

つまり、

情報の受け手の「情報摂取のスタイルが変ったこと」

これこそが、問題の本質なのではないかと言えます。

 

しかしウラを返せば、

「紙だからこその利点」

を活かせば、紙がなくなることはない。

そうも考えられます。

 

紙が情報伝達のための媒体である以上、

紙が生き残るかどうかの条件は「紙で読む利点があるかどうか」だけだと思うのです。

 

しかし、

紙の利点も考えてみると副次的なものしかないようにも思えます。

コンピュータやケータイを扱わない(扱えない、環境がない)人のために、とか

読書において、そこに含まれている文字情報以外の、

触覚(紙や印刷の手触り)、嗅覚(紙や印刷の匂い)、視覚(装丁)に味わいを感じる、とか。

 

先日、iPadと一緒にとても素敵な装丁の本を重ねて持ち歩いているカッコイイ大人を見かけました。

早くも、まさにその「スタイル」が答えなのかなと感じるような。

 

 

変化の時代とは、つらく厳しいもの。

でも、希望や楽しみも色々とあるはずです。

 

私たちは「メディアサービスプロバイダ」として印刷だけにこだわらず、

紙はひとつのメディアでしかないという位置づけとして考えています。

あくまでも私たちの使命は、「伝えること」と「伝わること」であり手段にはこだわらない。

 

だからこそ、この新時代への変化はある意味「嬉々感」とも感じています。

 

この写真は、当社の創業時(明治四十三年当時)のものです。

100年前の創業者たち。

これから100年後には、いったいどうなっているのか想像も付きません。

いや、

「想像も尽きません」という方が楽しそうですね。

2010年7月5日  研究テーマ:
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